泣き顔にサヨナラのキス



「お疲れ様です。野上さん、ご馳走になります」


ヒラヒラと手を振って。

山本さんは、呼び止めるあたしの声を無視して出ていった。


そして、訪れたのは沈黙。


何か言わなくちゃ。ええっと…… 考えても何も言葉が浮かばない。


いたたまれずに、お酒でも呑もうとグラスに伸ばした右手を孝太が掴んだ。


「何してるの?」


「えっ?」


何が?あたしはお酒を呑もうかと……


「えっ、じゃないよ。あーぁ、騙されたっぽいな、俺」


「は?騙されたって、」


山本さん、孝太に何を言ったの?