営業のくせに、方向音痴のあたし。 曲がり角を間違ったみたいで、マンションに戻るまでに思いの外、時間が掛かってしまった。 本当、自分のマヌケ具合が情けない。 プリンとスポーツ飲料を冷蔵庫に入れて、風邪薬とお水を手に寝室へ向かう。 そっと、寝室のドアを開けると、あたしに気が付いた原口係長がゆっくりと身体を起こした。 やっぱり、ダルそう。 「すみません、遅くなりました。お薬飲んで下さいね」 そう言ってグラスを差し出したあたしの腕を、原口係長はぐっと引き寄せた。