泣き顔にサヨナラのキス



そうやって、何度も自分を納得させた。

会社を出てしばらく歩いてタクシーに乗った。


きっと、涼子さんのお店に行くのだろう。


「あの、異動の話、受けたいと想います」


「わかった。事業部と調整して、詳しいことは連絡する」


タクシーの背もたれに、身体を預けたままの原口係長は、やはり疲れて見えた。


「大丈夫ですか?」


「ん?ああ」


「やっぱり、帰りましょう」


「ビール呑みたいんだよ」


「家で呑めばいいじゃないですか」


そう言ったあたしを原口係長が恨めしそうに睨んだ。