しっかりしろ、あたし!


顔を上げると、爽やかに微笑んでいる原口係長がすぐそこに。


不覚にも私服の原口係長にキュンとしてしまった。


「酷い顔。お前、何で泣いているんだよ?」


「これは昔観た、泣ける映画を急に思い出して。ただそれだけです」


「ふーん」


「だから、大丈夫なんです。し、失礼します」


その場から、慌てて離れた。


原口係長は、追い掛けて来なかった。当然だ。


偶然会って、暇ならランチでもするかって社交辞令のようなものだし。



それなのに、


あたしは振り返ってしまった。