原口係長に背中を向けて、ハンカチで目元を押さえた。 ……マスカラが滲んでる。 「嫌なら、家まで送っていく。車、すぐそこに停めてるから」 「一人で帰れますので」 下を向いたまま、出来るだけ柔らかく答えた。 こんな時に優しくなんてしないで欲しい。 甘えたくなるよ。 ダメだな、あたし。 孝太が女の子と一緒にいるからって、あたしが同じことをしてもいいわけじゃない。