ズンズンと大股で歩いていく原口係長に、着いていくので精一杯だった。


あたしの右手は、原口係長の掌の中でキツく握られていて。


えっと……


「待って下さい、靴が脱げます」


どうしていいのか、わからずに嘘を吐いた。


あたし達は今、手を繋いでいる。


こんなところを誰かに見られる訳にはいかない。


「靴?」


「あの、手を離してもらえますか?」


「……あ、そうだな」


瞬時に解放される、あたしの右手。


不思議だった。少し寂しく感じるなんて。