「じゃ」と言うと、孝太はスーツの上着に手を伸ばした。 ……もう帰るの? もっと、話していたいのに。 そう想っても、引き止めてはいけないような気がして。 だから、あたしも黙って立ち上がった。 口を開けば、「帰らないで」と、情けない言葉を言ってしまいそうだったから。 キッチンを横切ったところで不意に孝太が立ち止まった。