泣き顔にサヨナラのキス

   

喉の奥がヒリヒリとアルコールの刺激を受けるのに、意識ははっきりとしていて。


あたしは、酔うことも出来ないみたい。


「こんな遅くまで、すみません。あの、帰りますね」


ノロノロと立ち上がるあたしに、原口係長が掛けた言葉は――…



「……え!?」


目を大きく見開いて、原口係長を見詰めた。


切れ長の黒い瞳は、少し潤んでいて。形の良い唇は薄く微笑みを作っている。



「泊まっていけよ」


もう一度、低い声が響いた。