泣き顔にサヨナラのキス

    

「ビール下さい」


「……もう、ない」


「じゃあ、買ってきます」


「待てって」


バッグを手に、勢いよく立ち上がったあたしの腕を、原口係長が掴んで引き留める。


「こんな夜中に、一人で出ていくなよ」


「だって、少し酔わないと」


ドス黒い感情に支配されて、どうにかなってしまいそう。


そう、あたしは孝太を信じられないんだ。


だから、こんなに苦しいんだ。情けない、本当に。