「着いたぞ」と原口係長があたしの肩を軽く叩く。 何れぐらい走ったのかわからない。 とても長い時間のようで、それでいて、ほんの数分のようでもあった。 ハッとして顔を上げると、タクシーは立派なマンションの前に停車していて。 言われなくても、ここが原口係長の家だとわかる。 「あの……」 何とか絞り出した声は、酷く頼り無くて。迷子になった子供のようだった。