「ため息なんて吐いて、どうしたんだよ?」 そう言ったのは原口係長。 幹事の原口係長は最後に、皆の忘れ物をチェックしていた。 「別に、何もないです」 そそくさと立ち上がって、掛けていたコートに袖を通す。 バッグを手に取って、パンプスを履けば、いつもの仕事仕様のあたしだ。 大丈夫。何でもない。 ちょっと気分が沈んでいるだけ。