強・憑いていますか?

 「矢沢会長、どうしたの?」
 同学年の書道部の子だ。
 名前は…覚えていない。
 私は外行きの顔とポーズを作ると、
 「も、もうすぐ、学園祭の事とかあるから、い、色々、部活を見て回っているのよ。」
 ごまかせるとは思えないが、とりあえず、覗いていたと知られてはマズイ。
 「…じゃ、私、急ぐから…。」
 猛ダッシュでその場を離れた。
 名前も知らない同級生が、ぽか~んと立っていた。
 走りながら、頭の中は今見た事にフル回転させていた。
 回転させても…分からなかった。
 言い争っていた、瞬と誰か。
 書道部室の中は、瞬以外誰も存在していなかった。
 誰かが隠れるような場所など、どこにもなかった。
 ━もしかして…。
 ━瞬って…。