なんで。


たった今さっき、体を重ねた直後にそんなことを言うのか。


別れようと思っていたくせに、なんでわざわざあたしを抱いたりしたのか。


別れようと思っていたのなら、抱かなければ良かったじゃない。


なんで、いつものように抱いたりしたの……。


「……理由は?」


「あー……」


「冷めた? あたしのこと好きじゃなくなった?」


先に目を反らしたのは、大我だった。


「オレ、好きな子できたんだよね。つうか、もう付き合いそうなんだわ」


「ちょっ……と」


一気に、頭に血がのぼった。


でも、懸命に感情を抑え付け、言葉をごくっと飲み込んで、膝の上で両手をきつく握り締めた。


「……誰? 他校の子?」


悔しい。


知らなかった。


そんなそぶり、ひとつも見せなかったじゃない。


知らなかった。


大我が浮気していたなんて。


その事に気付けなかった自分にいちばん腹が立った。


頭にきた。


呆れた。


「あ……まだ、何も聞いてない?」


と大我が都合悪そうに口元を動かす。


「……てか、言えるわけねえか」


「何、どういうこと?」


「いや、相手、ひかりなんだよね」


あたしは絶句した。


何で、よりによって……。


「ひかりって……」


「陽妃の親友。ごめん」


よりによって、ひかりだなんて。


体が真っ二つに引きちぎられたように痛む。


ひどい。


あまりにもむごい現実に、放心するほかなかった。


「陽妃ってさ、気強いし。ひとりでも生きて行けるタイプじゃん」


固まり続けるあたしに、大我は言い訳じみたことをつらつらと並べ始めた。


「顔だって可愛いしモテるでしょ、普通に。陽妃は男に苦労しなさそうなタイプっていうかさ」


何それ。