「なるちゃん、おいでよ」
いつの間にか私のそばまで来ていた魁くんがそう言いながら私の両手を握る。
えっと、この手はなんなんだろう?
「か、魁くん」
名前を呼ぶと、ん?と魁くんは首を傾げた。
さっきのこと、気にしてないのかな?
「か、魁くんさっきのことなんだけど…」
「……?さっきのこと?」
あれ?
やっぱり気にしてないのかな?
ならぶり返さない方がいいよね…。
「ううん、なんでもない」
「そ?」
「うん」
そんな話をしてると、魁くんの後ろに瑠衣くんがいるのが見えた。
しかも何か怒ってるようで。
何に怒ってるのか分からなくておろおろしてると、瑠衣くんは何を思ったのか手を振り上げて…。
「いってぇー!!え?瑠衣!?てか、何も叩かなくていいじゃん!!」
魁くんの頭を叩いた。
ちなみにパシーンといい音が鳴ってました。
魁くん相当痛かったのか頭を抑えてしゃがみ込んでる。
「魁が鳴海の手握るから悪い」
そう瑠衣くんが言ったことで気付いた。
私は魁くんに手を握られていたことに。
さっきのことがあったせいで忘れてた…。
「手握るくらい許してくれてもいいじゃん!!」
「許すわけねーだろ」
なんて口喧嘩を始めてしまった2人。
どうしよう、私がちゃんと魁くんに注意してればこんなことにならなかったのに…。
またもおろおろすることになった私。
すると、零くんが近付いてきて…。
「鳴海ちゃん、あの2人うるさいからあっち行ってよっか」
「え?でも…」
「2人ともほっておいて大丈夫だから、僕たちは瑠衣の席で待ってよう?」
ニコッと零くんに笑顔を向けられ、私はおとなしくそうすることにした。
だって今の零くんの笑顔には有無を言わさない何かがあったように思えたから。
ちょっと怖かったかも…。

