18歳になった花音は施設を出なければいけなくなった。



大学にも行ってない花音が就職を決める事は思っていた以上に難しく、結果朝から晩までバイトをする生活がもう2年も続いている。



それでも、きっと花音にとっては忙しくしている方が良かったのだろう。



一人で居れば居た分だけ、孤独を感じてしまうのだから。




もう両親の顔を思い出そうとしても、その映像が頭に浮かぶ事は無い。



優しく微笑んでくれる印象だけはあるものの、その輪郭にはボンヤリとした靄がかかってしまっている。



ほとんど身一つの状態で施設に入った花音にとって、思い出の写真など手元には無かった。



だけど、あの日の事を思い出そうとすればどこか胸の奥がざわついてしまうのだ。



だから花音はあの日の事を自分の中に封印した。



思い出さない様にしっかりと蓋を閉めて。






そのハズだったのに。