「うっわ!!藍希、朝からそれって甘すぎだよっ!」

「ちょっ!!凪都帆(なつほ)ちゃんってば、声大き過ぎっっ」

凪都帆が思いの外大きな声で叫ぶので、その声にクラス中が振り向いた。
視線が集まって、藍希は恥ずかしくて俯いた。

「もぅ、今日が初なのに変に思われちゃうでしょ~」

思わず凪都帆を上目遣いで睨む藍希。
でも、その睨みは可愛いだけで、凪都帆には効かなかった。
ごめんごめん、なんて適当に謝る凪都帆に、藍希は仕方がないって気持ちで苦笑した。


登校したとき、まだ藍希の頬が赤くて、同じクラスだと喜ぶ凪都帆に尋ねられ、朝のことをかいつまんで話したのだ。
そうしたら、思いの外騒がれて藍希の方がびっくりだった。
凪都帆は、一年生のときのクラスメイトで、一番仲の良い友達だった。
親友、っていうくらい。
恋バナが大好きな、明るくはっきりとした子だ。
凪都帆にはいろいろ相談できる、気の置けない友達だった。


藍希たちの高校では、一年ごとにクラス替えがある。
今日が始業式だから、クラスの半分以上の人とは初対面なのだ。
あまり人付き合いが得意じゃない藍希は、第一印象が大切だと知っていた。
だから、変に目立つのは好きじゃないのだ。