急にボロリと涙を零した藍希に、淳はいたずらな笑みを引っ込めて焦る。

__ぇ…。
俺、何かしたか!?

考えを巡らしてみるけれど、思い当たることはなくて、どうにもできない。
とりあえず藍希に聞いてみようかと思ったとき、先に藍希の方から口を開いてくれた。

「だって…だってぇ……っ!
わかんないんだもん!
わかんなくて…藍希っ、あき……っ」

ぼろぼろと泣くから、言葉が要領を得ない。
やっとのことで宥め、藍希の目を見つめて問う。

「藍希。ゆっくりでいいから、俺に話して?」

こくりと小さく頷いた藍希は、心の不安を包み隠さずに話した。

…それを聞いて、淳は藍希を見つめたまま瞬きを二度繰り返した。
言ってしまえば、淳からしてみると、そんなことで?という不安だった。
でも、嗚咽を交えながらも話す藍希は真剣そのもので、そんな藍希を可愛いと思った。


恋に慣れないからこそ抱く、些細だけども深い不安。


話し終えた藍希を淳は優しく、しっかりと抱き締めた。

「藍希、ごめんな、不安にさせて。
でも、藍希が信じられないなら、俺は何度でも言うよ。
__藍希が、好きだ。
俺、本当は藍希がもうちょっと大人になってから言うつもりだったけど、昨日は我慢できなくて…。
昨日、藍希が泣いて自分の気持ちを言ってくれて、すっげぇ嬉しかった。
ありがとな、藍希」