【短編】さくら、咲く。

式も終わりに近づいてきた。




答辞。


卒業生代表、小林拓人。



先輩が、静かに席を立ち上がる。


静まり返る館内に、すすり泣く声が響く。





「答辞」






先輩の背中を見つめる。


今まで二年間、ずっとこの姿を見てきた。


ずっとずっと、先輩の背中を追いかけてきた。




話したくて。

でも、恥ずかしくて、出来ない自分…。



そんな自分が大嫌いだった。



だから今日は、二年分の思いを、先輩に伝えるんだ─。


悔いの残らないように。