未完成な妃



「会長が可愛すぎるのがいけないんですよ」


「なっ!」


「ね?」


「んっ……」


「会長…かわい」


それは一瞬のことで、何が起こったか理解するのに時間がかかった。

むしろ本当に起こったのかさえ。



「今、何した?」


「キスですね」


「どこに?」


「口」


「だよね」


「はい」


「………」


「………」


「一応ファーストキスなんだけど」


「だと思いました」


「……馬鹿にしてんの?」


そんなニヤニヤした顔して。


「いえ。嬉しいだけです」


「そんな恥ずかしい台詞を惜しげもなく……」


「会長。言葉とは会長を口説くために存在するんですよ?」


「違うわよ」


何言っちゃってんの?