未完成な妃



……ちゃんと笑えていたかしら。


あの子たちが私を気遣って言ってくれたのは解ってるの。わかってるんだけど……。



「あ、一ノ宮さん!」


「横山先生……」


またもや呼び止められて立ち止まる。

もう…何なの?


「テスト範囲、発表するから、この紙掲示しておいて貰えるかしら?」


「はい。わかりました」


横山先生から紙を受け取る。さっと目を通すと……範囲狭くない?


教科書20ページだなんてふざけてるの?どっから問題だすのよ。


「先生…範囲狭くないですか?」


「そうかしら。まあ、いいじゃないの。その方が楽でしょう?」


「でも……」


教師がそんなことを言っていいのかしら。




「ほら、一ノ宮さんはいつも頑張りすぎなのよ。たまには気を緩めてもいいんじゃないかしら」



「………っ!」



「あ…じ、じゃあ私、これ貼ってきますね……」


「ありがとう。よろしくね」


前は向かない。だって…見られたら困るもの。