「……え」


「千秋はもう居ない。
それ位儂にも分かってるんだ。
しかし、今は一人身で辛くてのう。
だからせめて、美空さんを呼んだんじゃよ」


「それなら尚更、千秋様の……」



違う、と言いたげに老人は首を振る。



「……違うんだよ、美空さん」


「話しの続きは中に入ってからしよう」



そう言い、門を開きおいで、と美空を促す。
美空はしどろもどろに戸惑いながらも中へ入る。

老人は美空が門を潜ったのを見ると、
丁寧に閉めて、玄関の扉を開けた。



「……外は寒かっただろう。
中に入ったら暖房がついてて温かい筈。
さあ入っておくれ」


「はい……」



口調は少し厳しめなのに対し、
目を見るとあくまでも優しそうに見守るように
美空を見ている。



美空自身、老人の意図がよく分からないまま、
老人の言う通りに中に入った。