「速く行くのよ、神さんの所に。
貴女の前の家に行きなさい、神さんに頼んだから」
私は、ママに背中を向けて走った。
ひたすらに、ママの言うあの場所に。
「美空、ごめんね……
こんな最後まで頼りないお母さんで、ごめんなさい…」
ママは、苦笑いしながら美空の走っていった方角を見て謝罪をする。
美空に生涯聞こえはしない、最後の謝罪を。
ママはその場所に倒れた。そして、自身がひかれた車が近付いてくる。
「おー? あの店のママさんだよなー、御免なぁ?」
中から出てきた男……
否、あの子に関係のあった人物がママを見て、
ニタァと気味の悪い笑顔を浮かべて話しかけてくる。
やはり、この男は……
「……残念ね、貴方には矢っ張り、私と共に死んでもらうわ」
ママは男に笑い掛け、素早く立ち、
渾身の力で、男の首に護身用のサバイバルナイフを
グサリ、と可能な限り刺し続けた。
−−−これがあの子の為になるのなら。
男は「ぎゅわぁぁああ!」と煩い悲鳴をあげ、バタンと倒れる。
ママも同じように力尽き、バタリと倒れてしまった。
男の首をグサリと見事に刺している女の姿は、
最早キャバ嬢のママの姿で無かったと言うのは
言うまでもない………。
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