レツは掴んでいた私の手を離すと、ドカドカとその人物の前まで歩いていく。 こっちからは、そのレツの表情が見えないけれど…見なくても分かる。 レツがどれだけその人を睨み付けているのか。 どれだけレツのお父さんを鋭い視線で捉えているのかが…。 「なんだ、レツ」 先に声を出したのは、予想外にもレツのお父さんの方だった。 その声は落ち着いていて、脈一つ乱さないほどの冷静さ。