朝から降り続いていた雨は、夕方から、その勢いを増した。

 現在の時刻、午後5時50分。
 夏が近付き、日が高くなったとはいえ、空を覆う真っ黒な雲のため、さすがに街は、薄暗闇に包まれていた。


 うっとうしい雨から、一刻も早く逃れようと、行き交う人々の足の運びは忙しい。

 ましてや、おしゃべりなど楽しむ者などいない。


 ピチャピチャと、水をはねる足音に混じって、時々、車のタイヤが水の上を滑る音が聞こえる。


 誰もが無関心。
 何もかもに無関心。


 今、一つの命が消えようとしていることにも、気付く者などいるはずもなく。


 濡れた街は、
 恐ろしいほど、静かだった。