「帰る」

あたしがそう言うと恭は、
腕をしっかりと掴み、
逃げられないように、
制している。


………つもりだろうけど、
そんなの、
あたしにとっては、
障害物にはならない。


いとも簡単に、
恭の手から逃れ、
あたしは、走った。
それからのことは、
よく覚えていないけど。
軽く走った。




………けど、恭にとっては
辛かったらしく、
追いつかれることはなかった。