「おじいさまにだまされたんだって?」
「えっ?おじいさまに聞いたんですか?」
「そう!おじいさまに呼ばれるにしても、帰国早々なんて今までなかったから、何事かと本社に行ったら、この話だったのよ。」
「そうなんです。この前から食事に行こうって言われたんですが、なかなかタイミングが合わなくて、一昨日の3時過ぎに突然電話があって、夜食事をしようと言われて、予定もなかったので行ったんですが、まさかお見合いだったなんて・・・」
「ごめんね。私たちは知っていたの。と言ってもお見合いの日を知っていたんじゃなくて、婚約者が黎さんだってことね!」
「知ってたんですか?」
「だいぶ前からね!絢ちゃんが高校生くらいだったかな・・・おじいさまが突然絢乃の婚約者を決めてきたぞ!って・・・私たちも驚いて、止めようとしたんだけど、一度言い出したら聞かないから・・・」
「そうですよね・・・」
「しかたがないから、絢ちゃんには内緒にして、将来絢ちゃんが本当に好きな人ができたら、その時に、おじいさまに破棄をお願いしようって、お父様と話していたの。」
「私が永森商事に行かされたのも、これが理由ですか?」
「そう。もしかしたら黎さんと出会って、お互いが好きになってくれたらいいな・・・なんて万が一を考えていたの。そうしたら本当に万が一が起こったみたいね!」
母は笑っている。その横で私はめちゃくちゃ恥ずかしくて下を向いてしまった。
「いいんじゃない!素敵じゃない!おじいさまが勝手に決めた婚約者なのに、知らないで好きになったんでしょ!」
「はぁ・・・」
なにも言えない・・・
