「おじいさま、今日は何を食べに連れて行ってくださるの?」 「今日は懐石じゃ。おまえも知っている赤坂の『のむら』を予約してある。」 「『のむら』ですか?嬉しいです。あそこのお料理はきれいでおいしいから大好きなんです。」 「そう言うと思ったよ。」 二人で顔を見合わせて笑ってしまった。 車が静かに止まる。『のむら』に着いたようだ。 運転手が車から降り、おじいさま側のドアを開ける。おじいさまが降り、私も降りる。