「…………翔ちゃんは、悲しくないの?」 ―――お母さんが逝ってから、 あたしは翔ちゃんの涙を、 ちゃんとは1回も 見ていなかった。 ………だけど、翔ちゃんだって、 “全く泣いていない” わけじゃなくて。 ―――真夜中に、声を押し殺し、 1人…すすり泣いていることは、 知っていた。 ………だからこそ、聞いた。 あたしの前で普通に、 泣いてよ。 あたしに見せてよ。 一緒にお母さんを想わせてよ…。