†紗緒梨†


逃げるなんて絶対無理。

逆らっちゃいけない。

逆らえない。



………だから仕方なく、
蓮様についていく。


車内はずっと沈黙で…。


何か聞くわけでもない。

何か言うわけでもない。



蓮様があたしの血を、
欲しがるわけでもなく、
ただ窓の外をぼんやりと
眺めていた。


「降りろ」

ぼんやりしていたあたしは
そう言われて初めて、
車が止まったことに気づき、
慌てて車から降りた。

「ありがとうございます」

お礼を言っても、無反応。

「行くぞ」

「あ、はぃ…」

蓮様は、必要最低限しか
話さない。


しかも超短い。


声も、
そんなに大きいわけでもない。


だから、
ちゃんと聞いてないとたぶん、
あたしの耳には届かない…。


今だってギリギリだった。