「「…………」」

俺、唖然。

だけど同じくらい、
東も唖然としていた。


「東、気づいたか? 今通り過ぎた女が俺の相手だ」

「…………相変わらず、まわりを
一切見ようとしないアホだな…。
どうせ、紙血のことで頭が埋まっ
ているからなんだろうけど」

「…………東?」

今…なんて言った?

「いえ。そのようですね」

東は、あの女に
気づいているようだった。


気配を感じ取れない、
吸血稀なのになぜだ…?



「何笑っているんだ?」

「……蓮様を見て無反応な方、初
めて見ましたので…思わず」

………確かに。

って!! 納得してんな!!俺ッ!!

いや、無反応っつか…。


「たぶん、気づいてないんだと思う」

「そうですね。おそらく…気づい
ていないかと」

「まじでありえねーわ…」

「相変わらずウケる行動してくれ
るな…」

「なんか言ったか? 東」

「“面白い方”ですね」

面白い…か…。

「あぁ。面白い女だ」

気づかれなかったのも、
騒がれなかったのも、
初めてだ。

「手続き…しますか?」

「あぁ。頼む」