「おはようございます、西林寺くん」
「おはよう大友さん」
「親睦会の告知はご覧になりまして?」
「うん……けど、親睦会って?」
「あら、ご存じなくて? クラスの一致団結を促すための、レクリエーションのようなものですわ」
「へえ……?」


直姫は、小さく首を傾げた。
麗華嬢はそれをにこにこして見つめている。


「具体的にはなにするの」
「クラスごとに学級会で決めるものだから、まだわかりませんわ。でも、お茶会や観劇が定番ですわね」


ただクラス全員で演劇を鑑賞するだけで、どうすれば一致が深まるのかはわからない。
要するに、単にクラス全員で動くということが重要なのだろう。
悠子さんの考えそうなことだ、と直姫は思った。


「でもわたくしは、他のクラスとは少し違うことをやってみるのもいいと思ってますの。直姫くんはいかが?」
「うん? んー、そうだね……なんでもいいかな」


少し丁寧すぎるほど典型的なお嬢様口調の彼女は、実は入学してからことあるごとに直姫にアプローチを仕掛けている、なかなか積極的な令嬢である。
友情とは違うが恋情でもないように見える、一体なんの対象としているのかは、さっぱりわからない。

だがなんにせよ直姫は、そんな彼女の気持ちには少しも気づいていなかった。
端から見ても明らかに少し空回りしている、なんというか、残念なところのあるお嬢様なのだ。


「今日の四時間目に学級会が開かれますの。なにかご意見があったら、考えておいてくださいましね」


麗華嬢は去り際、たおやかな仕草で、にっこりと笑顔を浮かべていた。