少女らは口々に言うが、どういう反応を返すのが正解なのかもわからず、直姫は小さく乾いた笑い声を上げるしかなかった。

衣装合わせのついでに本番用の衣装を着て練習してみることになったのだが、奈緒子の普段着として用意されたのは、クラシックな黒のワンピースに、純白のエプロン。
継母にメイドとして使われている、という設定のため、実際に大友家のメイドが着ている制服を持ってきたらしい。

無駄を削ぎ落とした、実用的で機能的なデザインではある。
だが男として生活している直姫はスカートなんてもう何年も履いたことがなく、下にジャージを履いてはいるが、どうも足捌きがうまくいかないのだ。

妙に慣れていたら端から見て不自然極まりないのだから、それでいいといえばいいのだが。


「私は男装も楽しいですけれど、西林寺くんは女装なんてイヤじゃなあい?」


パーティーの参加者役の少女が、タキシードに着られている自分の姿を面白がるように、ひらひらと太い袖を揺らす。

女装、という言葉に違和感を覚えないでもないが、異性装ならば日常的なものになってしまっているので、もはや物珍しさもなにもない。
確かに、女装と言ったほうが感覚としては合っているのかもしれない。

男子は男子で、誰かのドレス姿が披露されるたびに爆笑しているから、あまり露骨に嫌悪するのも変かと、直姫は言葉を選んだ。