「………………は?」


たっぷり五秒はあろうかというタイムラグのあと、珍しく気の抜けた声を出す。

まったくもって当然の反応だった。
なにしろ、生物学上は女性でも、彼女はこの学校ではれっきとした男子生徒なのだ。

まさかヒロイン役の選考中に名前が出るとは、誰にも思いもよらなかったに違いない。
唯一といっていいほど興味なさげに、上の空で外を眺めていたのだ。

唖然とする教室の中に、麗華のはにかんだ声が響く。


「し、失礼いたしましたわ。私ってば、ほほ、ほほほ……」


考えてみれば簡単なことだが、藤井が作っておいてくれたくじは、どんな場面でも使えるようにと、当然クラス全員分の名前が入っていた。
男女が混合していることを、彼女は少しも頭に入れていなかったのだろう。

大友さんてばうっかりもの、で片付けられる話ならばまだいい。
真琴と直姫が顔を見合わせて、さすがにやり直すだろうと、前に向き直った、その時だった。