「そもそもサトちゃんの話の信憑性も疑わしいじゃないですか」
「だよねぇ、本人が言ってるだけでは決めつけらんないな」
「でも実際に失踪してはいるんですよ? サトちゃんの言ってたのが嘘なら、一体なにがあったっていうんでしょうか」


真琴は一人だけ狼狽もあらわに、情けなく眉を下げている。
他の誰も慌てないせいで、全員分の動揺を彼が一手に引き受けてしまっているみたいだ。


「どうしましょう? サトちゃんに何かあったら、」
「真琴」


紅が、泣きそうな顔の真琴を呼んだ。
張りのあって通りのいい、大声を出し慣れた声。
いつもは竹刀を振るいながら檄を飛ばしたり、気合いの叫びを上げたりするその声が、静かに真琴の名前を呼ぶ。

真琴は顔を上げて、彼女を見た。
力のある視線が、真っ直ぐに交わる。

どうするもなにも、助ける以外の選択肢はない。
その目がそう言っているように思ったのは、真琴だけではなかった。

里吉の危機を知っているのは、自分たち七人しかいないのだ。
里吉を助けられるのも、自分たちしかいない。
選ぶ余地も迷う余地もない。

紅が、重く口を開いた。


「……やるしか、ないだろう」