「……いきますわよ」


重々しい物言いで、麗華が箱の中に手を入れる。

そしてその手を、ゆっくりと、ゆっくりと引き出した。
指の間には当然、折り畳まれた紙切れが一つある。

賽は投げられたのだ。

張り詰めた空気の中、これまたいやに緩慢な動作で、その細い指先に摘まれた紙を開き──。


大友麗華嬢は、固まった。

ぴしりと、まるで石で造られた像のようにだ。

数秒間そうして凍り付いたあと、目を伏せて、俯いて、それから頭を左右に振る仕草で、目に見えて気を取り直したのが分かった。

結果を確認した彼女の予想外の反応に、息を呑む生徒たち。
興味のなさそうな者は、ごく少数だ。

そして、麗華がついに読み上げたのは。


「──西林寺、……直姫くん。」


直姫は、顔を上げた。