心地よい風の中を少女は金髪をなびかせながら走っている。
左右には二、三階の木造建ての店々が建て並ぶ大通りだ。店前にまで鉄製や銀製の武器の数々を立てかけている武器屋や、街では一番と評判の様々な職種の服を揃えている服屋などがある。

ただ、休日は人々で賑わうこの通りも、今は平日のお昼を過ぎとあってまばらだ。

ファリナはある思いを抱き、軽やかな足取りでその中を駆け抜けている。この通りを抜けると噴水広場へとたどり着くはずだ。

少しずつだが街の中央にある噴水広場が見えてきた。女神を象った石像が同じ石造りの噴水の中央に設置されている。
この広い広場にはやや小さくも感じられる。

ファリナは広場に入るやいなや、足音を止める。

『なによ、あの人だかりは…』

視界の先にある噴水手前で何かを囲むように人々がU字の形で群を成しているのだ。50人以上軽くいるように見える…

人々は何かに気を取られたようにU字の中央を見ている。歓声を上げる者が多く、興奮しているように見られる。

ファリナは疑問の顔を浮かべた。

すると、それに気付いた20代程の陽気な細身の女性が話しかけてきた。