『ええ、もしライラックさんの弟子になって、認められれば、ファリナさん。あなたを魔術士として認定しますよ』

その言葉にファリナが食いつかないはずはなかった。

『ほんとに?!じゃあ、弟子なったら、わたしは"魔術士"ってことなんだ…』

ファリナは感嘆の声で嬉しい表情を浮かべた。

それに対して受付の男がいつも同じ事務的な口調で、

『いえ、弟子になるだけではなく、ライラックさんに魔術士として認められなければダメですよ。それに修行も何年かかるかも分からないですし…』

と言うが、受付の男はすぐに無駄だと判断し、口を閉ざした。

そう、遅かったのだ。

ファリナは話を最後まで聞かず、一言言い残すと後ろを振り向いた。そして、一目散に入り口に向かって早歩きで歩き始めた。

入り口で、息を切らせて立ち尽くしている初老の男とすれ違う。一瞬、爽やかな香りが漂った。

少女は開いているドアから出て、スキルギルドから立ち去った。

先ほどまでの光景が嘘かの中は静まり返っている。

そんな中受付の男が、

『ありがとう、か…』

周りに聞こえないほどの小声で、呟いた。