恋と魔術のはじめ方

『そうだよ。巧言魔術は魔力を込めた自分の言葉を相手の耳に届けることで、相手の精神状態に支障をきたすことが出来る魔術だからね。まぁ、初級の魔術だから、魔術士には効かないけどね…』

容姿にそぐわぬ落ち着いたライラックの言葉に、ファリナが続けて質問しようとした時、

『ちょっと、アンタ達!!何、私を無視してるわけ!…』

前方に立つ魔術士エリカが、まるで蛇のような目つきでこちらを睨みつけている。

魔術士エリカは、少々冷静さを欠いたように、

『だいたい、アンタ子供のくせにさっきから、私の魔術を大したことないとか、初級とか…生意気なのよ!!だいたい、なんで私の魔術が効かないのよ!!!』

と、ライラックに力強く右手の人差し指を突きつけた。

だが、ライラックはいつものように全く落ち着いた様子で、

『いちいちうるさいよ、魔術士のオバサン。だいたいオバサンの名前なんて聞いたこともないし、…それにまず、外見で人を決めつけない方がいいよ』

冷静な口ぶりだが明らかに挑発しているライラックのその言葉に、魔術士エリカは思いのほか反応した。

『だ、だれが、オバサンですって〜!』