恋と魔術のはじめ方

その者が声を掛けなければ…。

『ファリナ!!しっかりしてよ!…そんな初歩的な、巧言魔術にかかってる場合じゃないよ』

虚ろな状態だったファリナは、小さな魔術士の言葉によって意識を徐々に取り戻していく。

ぼやけていた視界もはっきりとし出してきた。

『?!』

ファリナが意識をハッキリと取り戻し、まず気づいたのが、自分が地面に両手をつき、尻餅をついて座っていることだった。

視界が低く、隣でこちらを見ているライラックより明らかに低い。前には変わらず魔術士エリカの姿があり、座り込んでいるファリナを見下すように視線を送っている。

どうやら意識を失いかけ、その間に腰を落としてしまったようだ。今もその魔術の効果があるのか、身体に力が入らず立つのも無理だ。

『しばらくは巧言魔術の効果があるから動けないかもね。…まぁ大したことない魔術だから、しばらくじっとしてたら動けると思うけど』

いつになく優しいライラックの言葉がファリナの耳に届く。

『ねぇ、ライラック。私…魔術をかけられていたの?!』