恋と魔術のはじめ方

その長身の女性は、高々に上げていた右手をダラッと腰辺りに下ろすと、

『え、私?…私の名前はエリカ…まぁ、若くて、美人で、あの華麗なる魔術士エリカ、というのは私のことなんだけどね…』

高飛車な声で名乗り、態度もかなり偉そうだ。指輪が目立つ左手をうちわ代わりに、自らの顔を扇いでいる。

ファリナはこの態度に、唖然としてしまった。

"魔術士ってみんなこんなに偉そうなやつばっかなの?"
という気持ちはどけ、エリカと名乗った魔術士に対し、

『あなたがこの街の人々に時の魔術をかけたんでしょ!どうして、こんなことをするのよ!!』

と、明らかに怒り気味な声質でファリナは怒鳴った。

すると、魔術士エリカはあっけらかんな様子で、

『だって、こうでもしないとゆっくりあなたを見つけられないじゃない。そうでしょ、ファリナ･セア。…まあ、あんたになんで、私の魔術が効かなかったかは予想外だったけど…ね』

そう言うと、舐めるような視線でファリナを見つめ出す。

『どうして私のことを…!?…あなたは一体…』

戸惑うファリナは動揺する気持ちを抑え、エリカに疑問を投げかける。