そう言うと初老の男は大きく息を吐き出いた。

その言葉にギルド内の人々は驚いた。さっきまで少女と受付の男のヒートアップした会話に夢中になっていた観戦者達が今ではそっちのけで魔術士の事を話始めている。

『ほんとかよ。まさか、この街に来てるとはなぁ…見てみたいなぁ』

『でも大丈夫かしら。あれだけ有名な魔術士だと危険じゃないかしら…』

『…確かに噂じゃ、誰にも負けたことないらしいからのう…』

まだ見ぬ魔術士の話で持ちきりだ。

その会話を耳にしていたファリナは受付の正面に向き直し、

『ねぇ、そのライラックってそんなにすごい魔術士なの?』

と、きょとんとした顔で聞きなれない男の事を尋ねる。

それに受付の男が答える。

『え、知らないんですか?!あの有名な魔術士ライラックさんですよ!…それにギルドでも最高ランクの…』

驚き混じった声で説明し始めるが、ファリナは一度も聞いたことのないような表情を見せる。

『ふーん。そんなにすごい魔術士なんだ。弟子にでもしてもらおうかしら…』

ファリナは細い両腕を組みながら、冗談を言った。が、受付の男はそれを冗談と受け取らなかったようだ。