恋と魔術のはじめ方

ライラックはファリナの疑問に気を止める様子はなく、確信しているかのような態度で、

『ねぇ、いい加減、時間の無駄なんだけど…』

と白髪の老婆に向けてやや冷めた口調で言い捨てた。

ファリナはライラックの言葉で、改めて老婆の観察し直した。

…。

やはり、特に変わったところはない。

そう思い、ファリナはライラックの勘違いと思った時、目の前であり得ないことが起きた。

『!?』

目の前の白髪の老婆が、瞬きをしたのだ。

普通なら当たり前なことなのだが、今この街で、瞬きをできる人間は2人しかいないはずだったからだ。

ファリナがそれに気づいたのを察知し、

『そうだよ。時を止められた人間は、瞬きすらできないからね…』

と、小さな魔術士は答えた。

すると、

『ふーん、意外だったわ。…まさか、全てお見通しなんてね…』

と、突如として若く甲高い声が辺りに響いた。

2人が見つめる中、白髪の老婆がこちらを見返し、口元を動かしている。

年老いた女性の姿と、その姿から出される若い声色が一致しないので、違和感が感じらる。