恋と魔術のはじめ方

『まったく、ボーとして人の話も聞かないし…。でも…まぁ、もう着いたから別にいいけど…』

手を合わせて謝ろうとしたファリナだったが、ライラックの後からつけ加えた言葉に、

『え、…着いたって、どこに?!』

と、疑問を投げかけた。
するとライラックは自信たっぷりに、

『…ここに探してる魔術士がいるんだよ』

と、不敵な笑顔をファリナに向けた。

ちょうど、大通りの途中で大きな3階建ての家が右方向にあり、辺りに人は少なく数名しかいない。

ファリナは立ち止まっている人達を何度も見回すが、やはり自分達2人を除いて、誰も動く様子はない。

『だってここの人達みんな、その時を止めるって魔術にかけられてるじゃない!』

ファリナも負けじと自信の籠もった声を出すが、小さな魔術士ライラックはそれに全く動じることなく、小さく欠伸をして、

『…単純な答えだよ。もし隠れるなら、みんなと同じように止まってればいいんだからね。…それに姿は隠せても、魔術士の匂いがそっちからすごく匂うんだよね』