恋と魔術のはじめ方

それなのに、生意気だが冷静で物事を進める落ち着いた口調、これまでの大人顔負けの大胆な行動力、それにこの状況でも不安にさえならない揺るがない自信…まさしく圧倒的な存在に思えた。

それらを実感し、最初はただ生意気な子供としか思っていなかったが、不思議と今はどこか頼れる存在に思えてきた。

出会ってたった数時間だったが、ファリナは少しライラックの事が分かってきたような気がした。

『…ねぇ!ちゃんと人の話聞いてる!?』

ファリナはライラックの呼びかけにハッと意識を戻した。

どこか呆れた顔を見せているライラックはその場で立ち止まってしまった。

『え?!…』

ファリナも慌てて立ち止まって周りを見た。

考えに没頭するあまり、いつの間にか噴水広場を抜け、大通りを2人で歩いて来たようだ。

この大通りは住居中心の地区らしく、街の住民の家々が多く左右に立ち並んでいる。二階建ての木造の住居がズラッと奥まで続いている。

そして、この大通りも噴水広場と同じく、静けさだが周囲を支配していた。
視界に見える範囲全ての人達は魔術で時が止められ、その場で止まっている。