恋と魔術のはじめ方

すると、そこに真横にいるライラックが口を開いた。

『そんなに気になるなら、こんな事をする犯人を見つけてやっつけようよ』

あまりにもライラックの歓楽的な口ぶりに、ファリナは驚き、

『えっ?!…でも、犯人を探すにしてもどこにいるのかも分からないじゃない…』

と答える。

ライラックは少し考えた素振りを見せると、ファリナの手を掴んでいた右手を離した。そのままの体勢で、右手の人差し指を肩の上にやり、後ろに向ける。

『あっちの方から魔術士の匂いがするから、いこうよ…まぁ、怖いならひとりで行くけど』

そう言うと、小さな魔術士はスタスタと噴水を回り込んで、指さした大通りへと歩いていく。途中、何人もの動けない人々とすれ違うが、全く表情すら変える様子もない。

『ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!ライラック…』

その様子を見て、ファリナは慌てて追いかける。
不気味なほど全く動かない人々の間を抜けながら、ファリナはライラックの隣に並ぶ。そのまま、気になっていたある疑問を投げかけた。

『ねぇ、どうして、私たちだけ平気なの??…もしかして、何かの罠とか?!』