恋と魔術のはじめ方

ファリナが住んでいたメリキスの街は、このスフィリノの街があるガイザ大陸の最西端にあり、スフィリノとは真反対に位置している。どちらかというと、商業が盛んなスフィリノとは違いメリキスはのどかな街だった。
そのメリキスの街を１年前まで統括していた長の娘-それが彼女なのだ。

１年前まではメリキスの長でもあるファリナの母親が、女手一つでこの街を守ってきた。そして、街の人達も彼女の人間性に引かれ、信頼をおき平和に暮らしてきた。

そう、幸せな暮らしはずっと続くはずだった。

…あの男が現れるまでは…。

…２年ほど前のある日、メリキスの街で非常事態の事件が起こった。

雨が吹き荒れる深夜過ぎ、メリキスの街を数名の盗賊らが襲ったのだ。

今まで一度もなかった事態に街の人達はただ恐れ、逃げることしかできなかった。

そんな街の人達をあざ笑うかのように、盗賊達は街を襲い己の欲望を満たすためだけの暴挙に出たのだ。

ファリナの母親も街の人達を守るために必死に闘うが、歯が立たなかった。