体育館の裏に出ると、近くの外灯が青白く辺りを照らしているばかりだ。


「やっぱさすがに早かったかな。」


すると、向こうの方から何やら足音が近付いてきた。海斗はとっさに身構える。今回はトミーのおかげで、まったくの丸腰での接触となった。

すると、外灯の明かりに照らされ人影が見えてくる。そして、次に海斗が見たものはとても奇妙な光景だった。
目出し帽にサングラス、上半身はサラシを巻き、下半身はニッカポッカ、右手に仏の木彫像というまさしく変人が現れた。
海斗は恐怖というか、もう少しで吹き出しそうだった。
なおも変人はこちらへ向かってくる。
と、何かにつまずいて派手に転んだ。
一方、海斗はもうその場に倒れこみ腹をかかえて笑いころげている。


「こら!笑い事じゃ済まされないぞ!」


確かに笑い事じゃ済まされない深手を負ったようだ。体についた土を払いながら変人はおもむろにサングラスと目出し帽をとった。
髪こそ静電気でペッタンコだが、顔はそっくりそのまま海斗である。


「驚いただろ?オレはお前と一心同体‥ん、違うな。こういう時は、まぁいいや。そういうことだ!」


「ゴホッ、ゴホッ、笑わせんじゃねぇよ!まったく意味がわかんねぇ。わかったのはお前がバカだということだけだ。」


海斗はようやく笑いをおさめたが、まだむせている。


「オレがバカだと?手ぶらで来たお前のほうがバカだろ?残念だが、ここで死んでもらう!」


そう言うと、変人は木彫像を振り上げて襲ってきた。海斗は呼子笛を取り出し思いきり吹き鳴らした。

すると、何かが空を切る音がしたかと思うと、フリスビーが変人の顔面を直撃した。