海斗の母親もなんら変わりなく元気に過ごしており、2日ぶりの息子の帰宅にも毎日のように、『おかえり』の一言だった。


「かあちゃん、最近のオレ変わってただろ?」


海斗は探りをいれてみた。


「そうねぇ、前に比べて良い子になったっていうか、見直したわよ!
あれ?まさか確信犯だったの?」


「カクシンハン?いやぁ‥違うと思う。」


海斗はなんとかその場を切り抜けた。


「あやうくバケツを掘るとこだったぜ。」


海斗は小さくつぶやいた。


「それを言うなら墓穴でしょ?まったく、あんたも応用はきくんだけどねぇ〜。」


台所で野菜を切りながら母が言う。母は地獄耳である。
海斗は自分の部屋に戻り、ベッドに転がった。


「いやぁ〜やっぱ自分の部屋って落ち着くよなぁ。ん?」


机の上に何か紙が置いてあった。


『明日の10時、体育館の裏に来い』


「なんだぁ?果たし状か?オレとタイマンはろうってか?どこのどいつだか知らねぇが、いい度胸だ。」


そして、海斗は冷静に考えた。


「すっかり忘れてたぜ。ドッペルゲンガーの奴だな。あいつしかいねぇよなぁ、いねぇよ。」


海斗はトミーにメールを送った。もちろんトミーからの返信は『行くな』だった。


「でも、イナティー投げ飛ばした奴が、家では親孝行か。意外といい奴かも。
まぁ、呼び出された以上プライドにかけて行くしかないでしょ。」


海斗は腹をくくった。二人が出会うことで、どちらかが消えてしまうことなどとっくに忘れていた。


そして次の日、海斗は見事に寝坊した。
時計を見ると10時ちょうどだった。


「オーマイガッ!!」