保健室にたどり着くと海斗はドアに手をかけた。
しかし、その手をおじさんが制する。


「待て、この中には入らないほうがいい。ただならぬ邪気を感じる。」


「なんか嘘臭いな。」


「私が言うことは絶対だ!故に私は入らんぞ!」


「中に息子がいても?」


「よし、行こう!」


おじさんは自らドアを開けて保健室へと乗り込んだ。海斗もそれに続く。
中に入り、周りを見渡すと部屋の隅に三上先生がうずくまっていた。
そしてこちらに気付くと、ゆっくりと立ち上がった。


「あら、二人ともどうしたの?」


「三上先生こそ、そんなとこに座ってどうかしたんですか?」


「ちょっと色々ありすぎて疲れたみたいだわ。」


三上先生は微かに笑みを浮かべている。


「おい、明らかに様子がおかしいぞ。それに手を見てみろ。」


おじさんが後ろから囁く。三上先生の手を見てみると、封筒が握られていた。


「あら、バレちゃったみたいね。これが欲しいの?」


三上先生は握っていた封筒を海斗の方へ掲げて見せる。


「おい、貴様!早く正体を現せ!」


おじさんが突然叫ぶ。しかし、見た目が学級委員長なのでいまいち覇気がない。


「やはりあなたですか。久しぶりですね。」


確かに三上先生が話しているのだが、声が全く違う。


「三上先生、声おかしいですよ。」


「お前が海斗か。かわいそうな少年だ。
こいつのせいでこの世から消えかけたんだからな。」


その言葉に海斗は驚いた。おじさんのせいで自分が消されかけたというのだ。
おじさんの方を見ると、下を向いて黙っている。
さっきの威勢の良さはすっかりなくなっていた。