不意に声がした。高岡先生の声だ。その声に反応して学生服を着た何者かが走ってゆく。
海斗はベッドの下から身を出して、その方向を見た。すると、窓を開けて飛び出していく自分の姿があったのだ。
海斗はベッドの下から抜け出し、窓の方へと走り外を見た。
しかし、もうその姿はなかった。


「あいつが、ドッペルゲンガー‥。」


海斗はしばらく外を見つめたまま動けなかった。


「西村君、大丈夫?危ないところだったわね。」


「オレ、ぶっちゃけ信じてませんでした。
でもこの目で見て確信しました!
あいつは間違いなくドッペルゲンガーです!」


「ドンペリ?えっ?」


高岡先生はしまったという表情だ。
後ろでは先生方が笑っている。


「ちょっと!今のはなんでもないですよ!」


高岡先生がとっさに紛らわそうとするが後の祭りだった。


「ドンペリってなんですか?」


さらに海斗の追い討ちがかかった。もちろん海斗はドンペリを本当に知らない。


「もういいでしょ!いい加減にして!
あら、清水君まだ寝てるの?」


「まぁ、そうですね。」


海斗の動揺を高岡先生は見逃さなかった。


「あなたまた余計なことをやったんじゃないでしょうね?」


一気に形成逆転だ。


「まぁ、アレですよ。奴も木から落ちるっていうじゃないですか?
そういうことですよ。」


「それを言うなら猿も木から落ちるでしょ。
さぁ、白状しなさい。」


そのあと保健室には昼間から雷が落ちた。
さっき、海斗の頭に落ちた雷とはまた違った具合の雷が海斗を襲ったのである。